カテゴリー「58 海外作品」の9件の記事

『中二階』ニコルソン・ベイカー

『中二階』ニコルソン・ベイカー ★★★☆☆

中二階 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

中二階のオフィスに戻る途中のサラリーマンがめぐらす超ミクロ的考察―靴紐はなぜ左右同時期に切れるのか、牛乳容器が瓶からカートンに変わったときの感激、ミシン目の発明者への熱狂的賛辞等々。これまで誰も書かなかったとても愉快ですごーく細かい注付き小説。

とても変わった構成のお話しでした。普通、注釈って、多くても2~3行だと思うんですが、本書に限っては、注釈がすっごく長くて、その注釈がすでに小説みたいじゃないか~という感じなんです。しかもその内容がすっごく細かい。読んでいて「ある!!それある!」の連続でした。いや~、考える事って、住む国が違っても結構同じなんですね。岸本佐知子さんが訳をしているのもすごく納得です。こんな奇妙な物語りを上手に訳されるのは、きっと岸本さんしかいない気がします。岸本さんといえば、今度エッセイを読んでみたいんですよね。面白いと評判なので。この主人公はビルの中二階にあるオフィスで働いていて、そこを出て、また戻ってくるというだけのお話(笑)。その時の主人公の頭の中をめぐるっている物事へのお話です。プラスチックのストローはあまり好きではないけど、首がジャバラ状になっているのだけは、最後まで愛着を捨てる事が出来なかったとか。同じ日に、両方の靴紐が切れるという驚きは、階段の一番上まで登ったのに、まだもう一段あると思い込んで床にはげしく足を打ちつけた時と同じくらいだ、とか。そして、紐のどの部分に毎回力が入って切れてしまったのだろう?とか、こまかーく考えていくんです。細かくて、ちょっと小心者の主人公なんですが、共感する事が多くて、くすくす笑ってしまう部分もありました。こうゆうお話しを書いちゃうってすごいな~。しかも、翻訳までされてるし(笑)。

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『また会う日まで』ジョン・アーヴィング

『また会う日まで』上下 ジョン・アーヴィング ★★★★☆

また会う日まで 下 また会う日まで 上

父ウィリアムは教会のオルガニスト。体じゅうにバッハやヘンデルの楽譜を彫りこんだ刺青コレクターでもあり、弾き応えのあるオルガンと腕のいい彫師に吸い寄せられるように、北欧の港町を転々としていた。母アリスは、幼いジャックの手をひいて、逃げたウィリアムの後を追う。コペンハーゲン、ストックホルム、オスロ、ヘルシンキ、アムステルダム…。街々の教会信徒と刺青師のネットワークに助けられ、二人は旅をつづけるが、ついに断念。トロントに落ち着く。父を知らないジャックは、「女の子なら安心」という母の信念のもと元女子校に入学し、年上の女たちを(心ならずも)幻惑しながら大きくなってゆく―。現代アメリカ文学最強のストーリーテラーによる怒涛の大長篇。

長かった~。ひたすらページをめくっていたという感じでした。これは、桜庭一樹さんの読書日記で存在を知ったんですけど、読書家の桜庭さんが「読み終わらない」と書いてらっしゃった意味がひしひしと分かりました。上巻はわりと時間がかかりながらもさらさらと読めたんですが、下巻の最初の方がなんだか眠たくなっちゃって(汗)。

だけど、長いだけあって、読了後は感激が胸にしみじみと湧き上がりました~。ちゃんと長くなるだけの理由があったのです。上巻ではいろんな街を次々と逃げていく父親を追って、母親と旅をするジャック・バーンズですが、途中でもう父親の後を追うのはあきらめて、一ヶ所に落ちつくんですが、その時に入学した学校が、女性だらけの学校で、ジャックは、身体的にも肉体的にもいろんな意味で年上の女性から性的な事を教えられます。女たらしだった父親の息子なので、血は争えず、女たちがジャックを放ってはおかないんです。その女性関係ですが、ちょっと性的虐待っぽいのもあるんですが、本書は著者・ジョン・アーヴィングの自伝的小説となっているので、アーヴィングが幼い時にうけた性的トラウマのエピソードからきているみたい。その女性の中の一人にエマという少女が登場するんですが、このエマだけは特別。生涯、ジャックにとっての一番の親友となります。エマとジャックは、軽いキスや触りあうくらいはするんですが、一度も性的関係にはいたりません。エマにはある悩みがあったのです。その悩みのせいでエマは亡くなってしまうんですが、亡くなった後もジャックにいろんな物を残していてくれているんです。ジャックの事がものすごく大切だったんでしょうね。

下巻では、ジャックの母親・アリス(刺青師 あだ名はお嬢アリス)も亡くなってしまうんですが、そこで初めてジャックは知る事になります。幼い時にアリスから聞かされていた父親像と本当の事は違うかもしれないということに。。そこでジャックはセラピストと一緒に自分の過去を順を追って振り返る作業に入るんです。この辺りでかなり睡魔にやられました。挫折しそうでした(^^;;;。

で、父親を探して会う事になるのですが・・・。父親との再会のシーンは、もうウルウルとなりました。ジャックの父親は、刺青に魅せられていて、体中に刺青を彫っているんです。その刺青のせいですっごく体が冷えるんです。だから、夏でも、いつでも長袖長ズボンという格好なのです。ジャックが再会した時の父親・ウィリアムは、精神的な病気になっているんですが、どれだけジャックを愛しているかがすっごく伝わってきて、いいんです~。その精神的な病も、理解出来る気がするんですよね、純粋な心ゆえの神経質さというか。。ある特定の言葉を言ったり聞いたりすると、どんな場所でも全裸になって自分の刺青を隅々まで見ないといられない状態になるんですが、それに必死に対抗しようとする父親や、周りの人々の奮闘がなんだか可笑しくて思わずかわいいなんて感じちゃうほど。

とにかく長い本なのですが、これを読みきった事で、大長編も読めるんだ~と、少し自信がつきました。ぼちぼちアーヴィングの作品を読んでいきたいです。まずは『ガ-プの世界』からかな。

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『愛のゆくえ』リチャード・ブローティガン

『愛のゆくえ』リチャード・ブローティガン ★★★★☆

愛のゆくえ (ハヤカワepi文庫)

ここは人々が一番大切な思いを綴った本だけを保管する珍しい図書館。住み込み館員の私は、もう三年も外に出ていない。そんな私がある夜やって来た完璧すぎる容姿に悩む美女と恋に落ちた。そして彼女の妊娠をきっかけに思わぬ遠出をするはめになる。歩くだけで羨望と嫉妬の視線を集める彼女は行く先々で騒動を起こしてゆく。ようやく旅を終えた私たちの前には新しい世界が開けていた…不器用な男女の風変わりな恋物語。

文学作品を読んだな~という感じ。邦題では「愛のゆくえ」ですが、原題は「The Abortion(堕胎)」だそうです。なるほど、だから後半はずっと堕胎に関するストーリィだったんですね。

不思議な図書館が舞台だと聞いて、ずっと気になっていた作品。最初の一文から惹かれました。主人公は図書館に住んでいるんです。図書館は年中無休で24時間開いています。いろんな人々が大切な想いを綴った本を持ってやってくるので、温かい珈琲やクッキーを出したりして、来館者をリラックスさせたりします。そして、持ってこられた本は、人々が好きな場所に置いていきます。でも、全部は入りきれないので、その後、洞窟に運ばれ、保管されます。

主人公はこの職業をとても大切に誠実にこなしています。そんな主人公の前に本を持って現れたのは、尋常ではない美形の顔をしながら、身体はこのうえなく発達し、周りの人々を混乱に落ちいれてしまう女性・ヴァイダです。このヴァイダと主人公はゆっくりと優しく一緒にいるようになります。そっか、淑女のような可憐な顔と、豊満な身体って、私からするとものすごい憧れなんだけれども普段生活するのには、かなり邪魔なのかもしれませんね。自分に見とれてタクシー運転手が目の前で事故ったりしたらきっと嫌だろうな。そんな容姿を嫌っているヴァイダですが、主人公の前ではのびのびと出来るんですね。それは主人公が持つ雰囲気がおっとりと優しいからかなあ。

全体的にとても奇妙で不思議なお話しでした。村上春樹を思い出してしまうような。。妖しいけれど素敵な文学作品という感じ。

後半は、ヴァイダが妊娠するのだけど、図書館の仕事はお給料が出ないので、主人公にはお金がなく、2人は堕胎をすることに決めて、行動します。堕胎という悲しい事柄なんですが、ほのぼのとしていているんです。ずっと図書館にこもっていた主人公が久しぶりに外出した感覚とか、のんびりゆったりしているんです。こんな素敵な異空間に連れて行ってくれるブローティガン。他の作品も読みたいです。

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『悪童日記』『ふたりの証拠』『第三の嘘』アゴダ・クリストフ

『悪童日記』『ふたりの証拠』『第三の嘘』アゴダ・クリストフ ★★★★★(満足)

悪童日記 (ハヤカワepi文庫) ふたりの証拠 第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)

戦争が激しさを増し、双子の「ぼくら」は、小さな町に住むおばあちゃんのもとへ疎開した。その日から、ぼくらの過酷な日々が始まった。人間の醜さや哀しさ、世の不条理―非情な現実を目にするたびに、ぼくらはそれを克明に日記にしるす。戦争が暗い影を落とすなか、ぼくらはしたたかに生き抜いていく。人間の真実をえぐる圧倒的筆力で読書界に感動の嵐を巻き起こした、ハンガリー生まれの女性亡命作家の衝撃の処女作。

私はどうして今までこんなにすごい作品を今まで読んでなかったのだろう・・・とまで思わせてくれる読書でした。

実は『悪童日記』を読んでいる最中に、インフルエンザになってしまって、熱が40度出て、体がぎしぎしいうような痛みがあって、朦朧としていたんだけど、どうしても本を床に置くことが出来ませんでした。だってとにかく一切をそぎ落とした簡潔な文章なのに、もう引き込まれる引き込まれること!!『悪童日記』では、兄弟なんですけど、常に「ぼくらは」という風に表現されています。何をするにも、どんな行動をするにも、2人の考える事はぴったりと一致していて、ぶれる事がないのです。

戦争が悪化して、ぼくらは大きな町から小さな町へとやってきます。祖母の家で暮らす事になるのです。その祖母がこれまたすごい人で、子供だからといって決して甘やかしたりしないんです。むしろ酷すぎるのでは、という境遇。祖母は町の人々から魔女と呼ばれています。それは、昔夫を毒殺したという噂があるから。そして祖母はぼくらを「雌犬の子」と呼びます。実の孫なのに~。ひぃぃ。ぼくらは始めの頃は労働を苦痛だと感じますが、2人でいろんな訓練をして、感情・感覚をすべて麻痺させていくのです。体と精神を鍛えて、そして日記を書くことにします。その日記にはルールがあり、本当の事しか書いてはいけないんです。そのルールこそが、『悪童日記』を構成している文章となっています。もちろん勉強もきちんとします。隣に「兎っ子」と呼ばれる少女が住んでいます。この「兎っ子」に関しては、目を瞑りたくなるような性描写が多々ありました。ぼくらは感情を殺して麻痺させているといっても、ぼくらなりの考えに従って、ある時は人を助け、ある時は人を殺します。すっかり感情を麻痺させたぼくらにとっては、迎えに来た母親も、会いに来た父親ももう必要ないんです。そして『悪童日記』のラストですが、息が止まるかと思いました。

二作目の『ふたりの証拠』になると、やっとそれぞれの名前が出てきます。リュカ(LUCAS)とクラウス(CLAUS)。この名前はアナグラムですね。ここでは、町に残ったリュカの精神の不安定さが顕著になります。母親に面影が似ているクララという女性に溺れたりしちゃうんですね。寂しさのあまりぐらぐらしている感じ。

そして最後の三作目の『第三の嘘』を読んで、呆然となりました。なんてゆうか、純粋に信じていたものが足元から崩れ去っていくような感覚。アゴダ・クリストフにまんまと煙に巻かれてしまいます。どれが事実だったのか?事実なのか?何が本物だったのか?本物なのか?もう一つの違う次元が存在してかのような。。

こんな簡潔な文章なのにこんなに心を打つ作品を書ける筆者ってとてもとても素晴らしい。

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『罪と罰』ドストエフスキー

『罪と罰』上下 ドストエフスキー ★★★★★(満点)

罪と罰 (上巻) (新潮文庫) 罪と罰 (下巻) (新潮文庫)

鋭敏な頭脳をもつ貧しい大学生ラスコーリニコフは、一つの微細な罪悪は百の善行に償われるという理論のもとに、強欲非道な高利貸の老婆を殺害し、その財産を有効に転用しようと企てるが、偶然その場に来合わせたその妹まで殺してしまう。この予期しなかった第二の殺人が、ラスコーリニコフの心に重くのしかかり、彼は罪の意識におびえるみじめな自分を発見しなければならなかった。

不安と恐怖に駆られ、良心の呵責に耐えきれぬラスコーリニコフは、偶然知り合った娼婦ソーニャの自己犠牲に徹した生き方に打たれ、ついに自らを法の手にゆだねる---ロシヤ思想史にインテリゲンチャの出現が特筆された1860年代、急激な価値転換が行われる中での青年層の思想の昏迷を予言し、強烈な人間回復への願望を訴えたヒューマニズムの書としての不滅の価値に輝く作品である。

長いこと積んであったドストエフスキーの作品。ようやく読む事ができました。まず言いたいのは、思っていたより難しくはないという事。なんてゆうかもっと哲学とか難しい思想とかが書いてあると想像してたんですよね~。もちろん、登場人物たちの名前が長くてややこしかったりするんだけれども。。それさえ乗り切れば、ラスコーリニコフが一体どうなっちゃうんだろう?という好奇心でどんどん読み進める事ができます。

主人公のラスコーリニコフは、貧しくて、資金がないために大学を中退し、家庭教師のアルバイトもやめてしまって、ずっと狭い部屋に閉じこもっていました。そして、アリョ-ナ・イワノーヴナという名の強欲な金貸しの老女を殺す決心をします。その理由は、もちろん貧しくてお金が欲しいからというものですが、もう一つの理由は、強欲な老女がお金を持っていても国はちっとも良くならないけど、ラスコーリニコフがそのお金で大学を卒業して、立派な人間になったあかつきには、沢山の貧困の家庭を救うことが出来るんだ!という事。つまり、偉人であるナポレオンのように、大きな目的に向かう時には、小さいもの(老女のこと)は犠牲にするし、その存在すらも考えない、という事なのです。「一人殺せば悪人だが、百人殺せば英雄」みたいなイメージを持っているんです。  老女には、腹違いの妹のリザヴェ-タがいるんですが、リザヴェータは老女に朝から晩までこき使われているんです。しかも、老女はもし自分が死んだ後、遺産はリザヴェータには一銭も残さないようにしているんです。なのでラスコーリニコフは、リザヴェータがいない隙をみはからって計画を立てて老女を斧で殺すのですが、殺した途端に、あたふたしてしまって、部屋の鍵もかけずに老女の部屋をあさって、いくつかの質草と老女の首にかかっていた財布をコートのポケットにいれます。そうこうしているうちに、リザヴェータが帰ってきてしまい、やむなくリザヴェータも斧で頭をかち割ります。

最初から最後まで、テンションがとにかく高くて、工藤精一郎氏の訳は上手だな、すごいなと感心しちゃいます。ここで面白いのは、せっかく殺人までして盗んだのに、財布や質草を中身を確かめもせずに、路地の石の下に隠すんです。で、手足はガクガクと振るえ、顔は蒼白で、食事もあまり摂らなくなってしまいます。ラスコーリニコフの周りの人々は、「どうしたんだい?気でも違ったかい?とにかく休めよ」と心配しますが、ラスコーリニコフは、自分の犯罪がばれやしないか、ばれた所でどうだというのだ、とぐるぐる考えて、むやみに外出したり、ぶつぶつと独り言を繰り返すようになるんです。

ラスコーリニコフ以外の登場人物たちも、とても興味深かったな。せっかく仕事に就いたのに、すぐに辞めて飲んだくれては奥さん(カテリーナ・イワノーヴナ)に体罰を受けるマルメラードフ。しかも、奥さんに体罰を受ける事が「嬉しいんですよ!」なんて言っちゃう。その奥さんは、元々はお嬢様だったんですけど、夫がこんな風で、貧しくなり、どんどん精神が壊れていってしまいます。その描写がリアルでした。(子供たちを路上で踊ったりさせてお金をもらおうとしたり)。そして、その奥さんにとっては腹違いの娘になるんですが、ソーニャという心の美しい娘さんが登場します。ソーニャは、父親が全くあてにならないから、自分を殺して娼婦をしているんです。義理の姉妹を食べさせる為に。この信心深いソーニャとラスコーリニコフは、後半辺りから、絆を強めていきます。 ラスコーリニコフとソーニャの関係だけをたどっていくと、かなりロマンチックな恋愛物語ともとれるんですよね。最後の方で、ラスコーリニコフが自首するかどうか?という場面でも、ソーニャ次第みたいな感じを受けました。

なんだか不憫だったのは、ラスコーリニコフの母親と妹かな。母親の名前はプリへ-リヤ・アレクサンドロヴナ。妹の名前はアヴドーチヤ・ロマーノヴナ(ドゥーニャ)。妹・ドゥーニャが婚約したのを機に、期待の星であるラスコーリニコフが住むペテルブルグを訪ねたのに、ラスコーリニコフは殺人の事で頭が一杯で、冷たくあたってしまうんです。もうこの母親が本当に息子を心から愛しているという事が行間から溢れ出てきて胸が切なくなりました。 まあ、ドゥーニャにとっては、結婚しようとしていたルージンというお金持ち(成金)が本当はすごくケチで嫌な奴だと、兄の洞察で分かったから、良かった面もあるのかも。

ラスコーリニコフと警察官のポルフィーリィ・ペトロ-ヴィチとの心理戦はミステリーとして、どきどきしながら読みました。読みながら、いつラスコーリニコフが自白しちゃったらどうしようと不安になるようなやりとりなんですが。 友人のラズミーヒンは、唯一、朗らかで元気で健康で、ホッとさせてくれる存在でした。

あまりにも面白かったので、他のドストエフスキーの作品も読んでみたいな~と思っています。

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『自負と偏見』 オースティン

『自負と偏見』 オースティン ★★★★★(満点)

自負と偏見 (新潮文庫)

イギリスの田舎町、五人姉妹のベネット家の隣に、青年紳士ビングリーが引っ越して来る。温和で美しい長女ジェーンと才気溢れる次女エリザベス、そして快活なビングリーとその親友で気難し屋のダーシー。ところが、エリザベスが高慢で鼻持ちならぬ男と考えていたダーシーが、実は誠実で賢明な紳士だと判った時・・・。二組の恋の行方と日常を鋭い観察眼とユーモアで見事に描写した名作。

ずっと挑戦したかったジェイン・オースティン。『ジェイン・オースティンの読書会』という小説と映画を観てから、ムクムクと私の中で湧き上がっていたオースティン熱。

古い昔の作品なのに、訳がいいせいか、とても読みやすかったです。もう、登場人物の心理描写がすごく細かくて、詳しくて、読んでいるこちらも頬が熱くなったり、胸がドキドキしたり、という読書でした。

タイトルの『自負と偏見』という言葉通り、ダーシーというお金持ちの紳士は、自負(プライド)の高さに邪魔されます。そして、知的な次女エリザベスは、ダーシーを偏見の目で見てしまって、なかなか恋に落ちる事ができません。個人的に、エリザベスのような女性は大好き。好感が持てるな。この時代の女性にしては、多少はねっかえりというか、はっきりと物を言う感じ。それが読んでいて気持ちいいんですよね~。爽快。ミスター・コリンズという、全く男らしくない屁理屈やの男性から、求婚されるんですが、それをものの見事にすっぱりエリザベスが断った時には、こちらもすっきり(笑)。この時代、女性が生活していくには、多少の経済力がある男性を早くみつけて結婚するしかないのですが、エリザベスは異性の気質(性格)に重点を置きます。それは結構勇気がいることなんだろうな。

なんにおいてものんびり穏やかで優しい長女ジェーンも、好きだな。その相手のビングリーは、とても良い人なんだけど、ここぞという時にはっきりしなくて、ダーシーの意見に流されたりして読んでいてやきもきしちゃった。

二組のカップルが結婚するまでの紆余曲折のお話なんだけど、593頁と、かなり長いです。読み終えるのに、3日くらいかかりました。解説にモームの評言として、「どの作品にもこれといった大した事件は起こらない。それでいて、あるページを読み終えると、さて次に何が起こるだろうかと、急いでページをくらずにはいられない。ところが、ページをくってみても、やはり何も大したことは起こらない。だが、それでいて、またもやページをくらずにはいられないのだ。これだけのことを読者にさせる力を持っているものは、小説家として持ちうるもっとも貴重な才能の持ち主である」とあるんですが、まさにその通りなんですよね~。大きなハプニングといえば、妹のリディアがウィカム(どうしようもないダメ男)と駆け落ちしちゃうくらいなんですよね、だけど続きが気になって気になって(^^;;;。

娯楽小説の王道だなと思いました。後、大好きな映画『ブリジット・ジョーンズの日記』って、このお話しを下敷きにしてるのでは??と感じました。

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『ジェインオースティンの読書会』

『ジェインオースティンの読書会』 ★★★★☆

ジェイン・オースティンの読書会 コレクターズ・エディション [DVD] ジェイン・オースティンの読書会

離婚歴6回の女性バーナデットは、愛犬を失った友人のジョスリンを励まそうと、オースティンの読書会を企画する。彼女は「オースティンは、人生の最高の解毒剤だ」と常々、考えていたからだ。ジョスリンの親友シルヴィアも、ちょうど夫から「他に好きな人ができた」と告げられ窮地に陥っていた。しかし、オースティンの長編小説は6冊あるため、メンバーもあと3人必要だ。まずは、趣味の合わない夫より教え子にときめいているフランス語教師のプルーディー。そして恋多きシルヴィアの娘、アレグラ。最後は唯一の男性にしてオースティン初体験の青年、グリッグ。メンバーも揃い、ようやく読書会が始まるが、それぞれの想いが絡み合い、思わぬ結末にたどり着いていく。

『自負と偏見』で有名なジェイン・オースティン。まずは、DVDを観て、面白かったので、小説も読んでみました。とは言っても、私自身、オースティンの作品をまだきちんと読んだ事がないのですが(汗)。本棚で眠っている『自負と偏見』と『説得』を読んでみなくちゃ。

もうなんてゆうか、読書会という単語の響きだけでときめいてしまうのは私だけでしょうか?月に一冊、オースティンの小説を読んで、メンバーの家などで、いろいろ語り合うのです。なんて素敵なのかしら。

印象的だったのは、プルーディという女性。フランス語教師なんですが、実際にフランスに行った事がないんですね。で、結婚しているのですが、夫との関係は冷めていて、教え子と不倫をしそうになるんですが、教え子の所に行く途中の信号待ちで、「こんな時ジェインならどうする?」と考えるんです。その後の行動がとても気持ちよい。

女性ばかりの中で、たった1人の男性グリッグ。彼がまた面白かった。オースティンの本を6冊、ではなくてドーンと「オースティン全集」みたいなのを持ってきちゃうんですが、その時の女性陣の表情に思わずクスッと笑っちゃいました。こうゆう系統の作品は大好き。

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『千年の祈り』イーユン・リー

千年の祈り (Shinchosha CREST BOOKS)

『千年の祈り』イーユン・リー 篠森ゆりこ訳 ★★★★☆

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父と娘のあいだに横たわる秘密と、人生の黄昏にある男女の濁りない情愛。ミス・カサブランカとよばれる独身教師の埋めようのない心の穴。反対を押し切って結婚した従兄妹同士の、平らかではない歳月とその果ての絆。―人生の細部にあらわれる普遍的真実を、驚くべき技量で掬いとる。北京生まれの新人女性作家による、各賞独占の鮮烈なデビュー短篇集。第1回フランク・オコナー国際短篇賞受賞!PEN/ヘミングウェイ賞受賞。ガーディアン新人賞・プッシュカート賞受賞。New York Times Book Reviewエディターズ・チョイス賞受賞。The Best American Short Stories2006収録。グランタ「もっとも有望な若手アメリカ作家」2007選出。

週刊ブックレビューで大絶賛されていた作品。これは読んでおくべくだろうと思い、早速図書館で借りました。装丁がとても素敵。素朴だけど凛とした強さがある感じ。この本は、ベストセラーよりも、ロングセラーになるだろうなと感じました。なんと、この本が著者の処女作なのです!!驚きです。

「あまりもの」「黄昏」「不滅」「ネプラスカの姫君」「市場の約束」「息子」「縁組」「死を正しく語るには」「柿たち」「千年の祈り」が収録されています。どのお話しも心に染み渡りました。なんてゆうか、人間って孤独なんですよね。その孤独を、淡々と受け止める主人公たちに、ため息が出そうです。フィリップ・クローデルの『リンさんの小さな子』という作品を思い出しました。

林(リン)ばあさんの少年に対する恋とも呼べる純粋な慕う気持ち。すごく胸がしめつけられました。そしてラストはやりきれない気持ちでいっぱいになりました。・・「あまりもの」

とにかくこれぞ静かに息づく、切ない物語りばかりでした。

著者の、次作に、ものすごく期待します。

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『本泥棒』マークース・ズーサック

本泥棒 本泥棒
販売元:TSUTAYA online
TSUTAYA onlineで詳細を確認する

 『本泥棒』マークース・ズーサック 入江真佐子訳 ★★★★★(満点!)

今年5冊目。

わたしは死神。自己紹介はさして必要ではない。好むと好まざるとにかかわらず、いつの日か、あなたの魂はわたしの腕にゆだねられることになるのだから。 これからあなたに聞かせる話は、ナチス政権下のドイツの小さな町に暮らす少女リ-ゼルの物語だ。彼女は一風変わった里親と暮らし、隣の少年と友情をはぐくみ、匿ったユダヤ人青年と心を通わせることになる。リーゼルが抵抗できないもの、それは書物の魅力だった。墓地で、焚書の山から、町長の書斎から、リーゼルは書物を盗み、書物をよりどころとして自身の世界を変えていくのだった・・・『アンネの日記』+『スローターハウス5』と評され、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどで異例のベストセラーを記録した、新たな物語文学の傑作。

今年は、少しずつでも、翻訳物に挑戦しようと思って良かった。この小説は、ものすごく良かったです。新しく出来た図書館で何気なくタイトルに惹かれて借りたんだけど、なるほど。ベストセラーになるのが納得!という感想です。

まず、時代はナチス政権下のドイツ。場所はミュンヘンのヒンメル通りの小さな家。リーゼルという少女が里親と暮らしています。里親の所に連れてこられる間の汽車の中で、リーゼルの弟は死んでしまいます。その弟のお墓を掘っていた青年のポケットから落ちた小さな本、『墓堀り人の手引書』。この本をリーゼルは初めて盗みます。

しかし貧しく、食べる物にも困る生活だったので、リーゼルはその時は文字が読めません。それを、里親である父・ハンスから毎晩少しずつ読み書きを習い、リーゼルはさらに書物に惹かれるようになるんですが、このハンスさんが実に人間味のある人物で、私は大好きです。煙草を好み、誰にでも優しく、平等で。アコーディオンを実に上手に弾きます。里親の母・ローザは、口は悪いけど、これまたすごく良い人でした。

語り手が死神という所も、面白かったです。リーゼルの近所に住む、金色の髪の毛をしたルディという少年との淡い初恋。その結末は涙がすごくでてとまりませんでした。ある事から、マックスというユダヤ人青年を家の地下室に匿う事になるんですが、マックスとリーゼルとの友情がたまらなくよかったです。マックスは、リーゼルに手作りの本をプレゼントします。あと、町長婦人が、辞書を何気なくくれたりするくだりも素敵だった。

死ぬほどお腹が空いているのに、食べ物よりも本が欲しいリーゼル。すごく愛おしかったです。

終盤らへんで、父親のハンスが死にかけているユダヤ人に、パンを与えた事から、「ユダヤ人びいき」とみなされ、マックスを匿っておくことが出来なくなり、ハンス自身も、戦争に行かなくてはならなくなります。読んでいて辛かったです。

私にとって、心に深く残る一冊となりました。

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