カテゴリー「51 山本文緒」の4件の記事

『アカペラ』山本文緒 

『アカペラ』山本文緒 ★★★★☆

アカペラ

苦しみ抜いた日々から再生を果たした著者が贈る、あなたの心を温める珠玉の物語。

無職で病弱な弟と暮す50歳独身の姉。20年ぶりに田舎の実家に帰省したダメ男。じっちゃんと二人で生きる健気な中学生。人生がきらきらしないように、明日に期待し過ぎないように、静かにそーっと生きている彼らの人生を描き、温かな気持ちと深い共感を呼び起こす感動の物語。6年ぶり、待望の小説集にして最高傑作!

大好きな山本文緒さんの復帰第一作目。「アカペラ」「ソリチュード」「ネロリ」の3編が収められています。山本さんの新作が読めてすっごく嬉しいです。でも、体調も心配です。あまり無理なさらないように・・・と思ってしまいます。

今までの山本文緒さんの作品といえば、普通に見える主人公の女性がだんだんと歪んでいって、最後にはとんでもない、目をおおいたくなるような事になっちゃうパターンが多かった気がします。「あなたには帰る家がある」や「眠れるラプンツェル」や「恋愛中毒」とか(どれもすっごいお気に入りなのです)。今回は、出だしの文章からして、タッチがなんだか違うな~と感じました。

「アカペラ」の主人公は15歳の女の子・権藤たまこ。母親はしょっちゅう家出をするし、大好きなおじいちゃんにひどい事を言ったりするから嫌い。おじいちゃんの名前は金田泰造、あだ名はトモゾウさん(ちびまるこちゃんからの由来)。おじいちゃんは何故だかたまこの事を初恋の「まあこさん」だと思い込んでいます。いや~私、優しくて可愛らしいおじいちゃん物って、もう涙腺が駄目なんですよね。ある日たまこは、母親がおじいちゃんをいじめるので、おじいちゃんを連れて家出するのですが。。いや~、やっぱり泣いちゃいました。こんな泣かせ方も出来る作家さんだったのですね。

「ソリチュード」に出てくる駄目男の気持ちも分かるんですが、なんとなくイラッとしました(笑)。自分を心配してくれる女性たちがいるのに、携帯の電源をオフにしていたり。。ことをうやむやにして逃げてしまう男性って苦手なんですよね。美緒の娘の一花がハルイチおじさん(主人公)に帰って欲しくなくて、携帯を壊したり雨の中走ったりするシーンはすごく良かったです。

「ネロリ」には、ちょっと歪んだ女性が出てきました(山本さんらしい?)。病弱な弟を生きがいにしている中年女性。その弟はヒデちゃんといって39歳。無職。病弱で働けないのです。これは、目には見えない病気が、どれだけ健康な他人にはわかってもらえなくて、なかなか辛い思いというのを静かに表現されているのだな、と感じました。ココアちゃんという第三者の目線でヒデちゃんの体調や姉と弟の親密な関係が淡々と書かれてあったので、読みやすかったです。山本さんの体調が完全に良くなったら、がっつりとした長編が読みたいです。

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『恋愛中毒』山本文緒

『恋愛中毒』 山本文緒 ★★★★☆ 

恋愛中毒

もう神様にお願いするのはやめよう。―どうか、どうか、私。これから先の人生、他人を愛しすぎないように。他人を愛するぐらいなら、自分自身を愛するように。哀しい祈りを貫きとおそうとする水無月。彼女の堅く閉ざされた心に、小説家創路は強引に踏み込んできた。人を愛することがなければこれほど苦しむ事もなかったのに。世界の一部にすぎないはずの恋が私のすべてをしばりつけるのはどうしてなんだろう。吉川英治文学新人賞を受賞した恋愛小説の最高傑作。

前々から気になっていた作品。タイトルからしてすごいですよね。「中毒」とは。まるで麻薬や覚醒剤のよう。

すごく良かった。一気に読める作品だった。著者の山本さんも、苦しんで悶えながら書き上げたのではないでしょうか?と感じます。

出だしの「恋は人を壊す」、このフレーズからして、これはすごい小説だぞ~とワクワクしました。恋愛小説には二種類あって、恋愛がしたくなる小説と、怖くて恋愛なんかしたくなくなる小説、があると思う。これは完璧に後者です。

最初、元恋人にストーカーまがいの事をされて悩んでいる若い男性のお話かと思ったら、同じ会社で働く地味なおばさん事務員のお話だったというのも非常に上手い。

水無月美雨は、弁当屋で働きながら、時々翻訳の仕事をして、地味にひっそりと暮らしていた。そこに、作家であり女性関係が派手な創路功二郎がやってきて、だんだんと恋に堕ちていき、それは狂気へと繋がっていってしまう。

水無月の考えや行動には、共感はちっとも出来ないのに、なぜか嫌なドキドキ感が消えないまま読みました。「どうして私だけをみてくれないの?」という水無月の叫びがすごくて、でも水無月は淡々と行動していってしまって。淡々とすごい事をやらかしてしまって。。

深く深く人を愛しすぎるのって危険。怖い。と感じました。山本さんの筆力に脱帽。

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『あなたには帰る家がある』山本文緒

あなたには帰る家がある Book あなたには帰る家がある

著者:山本 文緒
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

『あなたには帰る家がある』 山本文緒 ★★★★

 夫は花など興味がないが、秀明は「紫陽花の花が咲き始めましたね」と言ってくれた。平凡な家庭の主婦・綾子が恋をしたのは、そんな理由からだったかもしれない。そして秀明が恋に落ちたのも、仕事を持つ妻にはない、夕餉の支度をする幸福そうな綾子の姿を見たからなのかもしれない。妻の恋、夫の恋をきっかけに浮き彫りにされるそれぞれの家庭の事情ーーーー。「結婚」の意味を問う、恋愛長編小説。

 この小説は、古本屋さんで百円で購入したのだけれど、内容がすごく面白くて、かなり満足できました。真弓と綾子という性格が正反対な二人の女性が主人公です。真弓は、家事にも子育てにも無関心な夫・秀明に腹を立てて、仕事を始める決意をします。保険のセールスレディ。そして、もし自分の方がお給料が良かったら、秀明には仕事を辞めて「主夫」になってもらうという賭けをします。

 綾子は、家事が大好きで、家の中の事を精力的にこなしていましたが、営業に来た真弓の夫・秀明の人を思いやる心に惹かれ、恋に落ちます。もともと、ある事情があって、好きではなく、逆に容姿が悪い夫と結婚した綾子なので、家事は好きでも、夫との体の触れ合いは嫌いです。

綾子と秀明は、度々デートするようになります。夫の浮気に気づく真弓。秀明にどんどん本気になる綾子、それに戸惑う秀明。。それぞれの家庭が少しずつ壊れていきます。読んでいて怖いです(;^_^A

印象的な部分は、真弓の心理描写で、朝から手の込んだ料理を作っても、まずいとも美味しいとも言ってくれない夫を見て、とたんにやる気をなくす場面。主婦業は、誰からも褒められる事はほとんどないし、もちろんお金にだってなりません。。うーん。専業主婦って、私的には憧れなんですが、そういうものなんでしょうか??でもだからといって、夫を「主夫」にしようとまでする所は、やりすぎだと思いました。

ラストに向かって、綾子がどんどん壊れていくのが、読んでいてつらかったです。ハラハラドキドキしました。。やはり、いくとこまでいってしまいましたね(><)。。

このお話を読んでしみじみ感じたのは、人間って、無い物ねだりだなぁ。。です。

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『群青の夜の羽毛布』山本文緒

群青の夜の羽毛布 Book 群青の夜の羽毛布

著者:山本 文緒
販売元:幻冬舎
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 『群青の夜の羽毛布』 山本文緒 ★★★★

 家族っていったい何でしょうね?たまたま血が繋がっているだけで、どうして一緒に暮らしているんでしょう。---丘の上の一軒家に住む女三人。家族とも他人とも上手く関係を結べずに大人になった長女と、その恋人をめぐって、母娘の憎悪、心の奥底に潜めた暗闇が浮かびあがる・・・。恋愛の先にある幸福を模索した、傑作長編小説。

 うわぁーー(;^_^A。このお話は読んでいてとっても怖かったです。この本は、積読状態にしてあったんです。「なーんだか暗そう。。」という理由で先延ばしにしていました。ところが読み始めるとめちゅめちゃ引き込まれました。最初の出だしとか、「??」な会話のシーンがあって、「え?なんだろう」とグイグイ読んじゃいました。精神的に怖いストーリーですよね。時々、カウンセラーらしき先生と患者さんが話をするシーンがあるのですが、三分の二までくらいは一体誰が患者なのか分からず、ドキドキしました。構成がまるでサスペンス!!この作品には「おでん」が頻繁に出てくるので、なんだかおでんをグツグツ煮込んで食べたくなりました。もちろん、イカも農薬も入れません(笑)。神経症の主人公さとると、母親の関係がとっても淋しく、悲しかったですね。妹さんの方がまだ救いになると思いました。

 

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