カテゴリー「32 「な行」その他の作家」の4件の記事

『ケッヘル』上下 中山可穂

『ケッヘル』上下 中山可穂 ★★★★★(満点)

ケッヘル〈上〉 ケッヘル〈下〉

ケッヘル番号が、わたしをこの世の果てまで連れてゆく。モーツァルトの音楽に取り憑かれた男と、過去の亡霊から逃げ続ける女。出会うはずのない二人の人生が交差した瞬間、狂おしい復讐の幕が上がる。

初中山可穂作品。以前に他のブロガーさんたちが本書をすごく褒めていて、ずっと気になっていた作品。とにかくすごいとしか言いようの無い位、全てがモーツアルト尽くしでした。最初は、ケッヘルという単語が沢山あるモーツアルトの作品の通し番号だという意味も知らずに読み始めたのですが、ぐいぐいと惹き込まれました。

木村伽椰は、ドーバー海峡に面した港町、カレーで、海に向かって一心不乱に指揮棒を振る遠松鍵人という裕福な男性と知り合いになります。伽椰は、もう三年近く海外をてんてんと旅していたのです。決してお金が有り余っての趣味とかではなく、日本に帰りたくても帰れない事情があったのです。でも、そろそろお金も尽きてきたし、日本に帰らなければ・・・と悩んでいた所に、このモーツアルトに心酔している遠松という男性から、ある条件を交換に、日本での住居と指し当たっての仕事を斡旋してもらう事になるのですが・・・。

最初は、色んな国を旅して回っている伽椰が、とても優雅に思えたし、裕福な遠松という男性からも親切にしてもらって、なんてラッキーな女性なんだ、と感じていたのですが、読み進めるうちに、本当にモーツアルトの音楽と一緒に沼の中にズルズルと沈んでいく感覚でした。

本書を読んでいると、嫌でもモーツアルトに詳しくなるし、ものすごーくモーツアルトを聴きたくなります。読み終えた後、すぐにレンタルショップに行って、モーツアルトのCDを借りてきました。売り場でまず驚いたのは、モーツアルトのコーナーには、「音楽療法」のカテゴリが沢山あるという事。モーツアルトの曲は、肉体・精神にとても良い作用を及ぼしてくれるそうです。聴いてみて、なるほどな~と思いました。”フィガロの結婚”というカンツォーナは、とても澄んだ音色だし、”夜の女王のアリア”からは、濃い悲しみと恐怖の音色が響いてきました。でも、なんといっても懐かしかったのが、”ピアノ・ソナタ第15番・第一楽章”ですね~。これは、ピアノ教室の教材に使われているソナチネですね。懐かしいー。

主人公の木村伽椰は、同性愛者なんですが、ほとんど抵抗無く読む事が出来ました。むしろ、遠松鍵人の過去のエピソードを読んでからは、同性愛者のほうが心地よく感じた位。遠松鍵人と、美津子の悲しい愛の物語りは、あまりに残酷すぎて、胸が痛かったです。読みながら泣いて笑ったのは、鍵人の幼少時代の、父親との旅。目的地を決めず、新幹線の列車番号とかをケッヘルの番号に当てはめて次々と旅ををするんです。幼い鍵人は、そんな父親の行動を最初は憎み、不安になり、逃げ出そうとするんですが、父親のふと弱い面を見てしまって、結局逃げ出す事ができないのですね。

伽椰が就職したアマデウス旅行社という会社は、すごく奇妙な旅行社。ものすごく個人的なプライベートに突っ込んだ旅をお世話するんです。この会社に旅をお願い出来るお客様の条件は、モーツアルトを心から愛しているかどうかなんです。ちょっと面白そう。。なんて思っていたんですが、何故か伽椰が受け持つお客が次々に不審な死に方をしてしまうんです。そこにはケッヘルの番号が関係していて。。伽椰の芯の強さ、行動力がすごく良かったな。ひとつ納得できないのは、「もう恋愛はかんべん・・・」という気持ちのはずなのに、安藤アンナにほぼ一目ぼれのような形でアタックしていく所。少しだけ、「え?そんな簡単に?」と思いました。

外国が舞台のお話しは、頭の中でイメージしにくい時があるんですが、本書に限っては、見事にすーっとイメージ出来ました。硬質で繊細な中山さんの筆致が好きです。

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『小春日和』野中柊

小春日和 (集英社文庫)

買ったきっかけ:
ほのぼのとした雰囲気のタイトルに惹かれて。装丁もレトロチックで良い感じ。

感想:
あらすじ・・・小春と日和。三月生まれなのにそう名付けられたふたごの姉妹。映画好きの母の影響で始めたタップダンスに、幼いふたりは夢中になる。そんなある日、舞い込んできたケチャップのCMに出演したことで、彼女たちの周辺がざわめき始める―。海辺の町・逗子を舞台に、少女たちの成長を伸びやかに描くハーモニー豊かなノスタルジック・ストーリー。--------------

うわー♪めっちゃほんわかしました。子供の時って本当にこうゆう事を考えたり実行したりしてたなーーってしみじみと感じます。
これは、小春ちゃんと日和ちゃんという双子の物語なんだけど、私はついリアル姉との幼少時代を思い出しました。
だいたい、幼い頃の習い事って、母親の影響が強いような気がします。ちなみに私と姉はピアノでした。(連弾とかしてましたねー)
で、そこまではいいんだけど、この双子ちゃんには芸能界入り?みたいな話しがまい込んでくるからさあ大変!!子供のためを思っての両親の喧嘩がかなりリアルでしたねー。
個人的には、芸能界ってすごく怖いイメージがあるんだけど、タップダンスやミュージカルといった方向なら、思い切りやらせてあげていいんではないかと。。
練習の後の気持ちいい疲労感とかの場面を読むと、私もタップダンスやってみたい 無我夢中でやってみたい とか思います。
ザ・ピーナッツはなんとなく知っています。
まさに歌って踊れる双子でしたよね。

最初のほうにある、「ふたりがふたごだということを気にしないで生きていけるように」とありましたが、このお話しには、その未来が書かれていません。すごく気になります。いつごろから、どんな理由でふたごという枠から出て行こうと決めたのか。

おすすめポイント:
「Aiways 三丁目の夕日」
「ちびまるこちゃん」が好きな人とかに
オススメです★

小春日和 (集英社文庫)

著者:野中 柊

小春日和 (集英社文庫)

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『ガールミーツボーイ』野中柊

ガール ミーツ ボーイ

買ったきっかけ:
書評ブロガーさんたちの所で、よく目にする作家さんだったので。

感想:
あらすじ・・・太朗の様子がおかしい。夏だから?奴も恋した?それとも…?予定外の妊娠で子宝を授かってしまった私。母ひとり子ひとりの毎日はにぎやかで、香ばしい。でも、ひと夏の終わりはどこか危うい…。こどもの天国と大人の現実を描く表題作と短篇「ボーイ ミーツ ガール」。-------

ポップな軽い感じの文体で、さらさらと楽しく読めました。こうゆう形の作家さんも私は好きです。
内容は、最初はシングルママとその息子・太郎とのつとめて明るい物語り。。かと思いきや、結構リアルな重さのあるお話でした。
人を好きなり、夢中になって、気がつけば妊娠していた。愛する人との間の子供だからこそ、可愛いし、一生懸命育てる。。それはあたりまえだと思います。
しかし、ここに登場する田口(夫)は、失踪してしまっているのです。

毎日太郎と楽しく明るく過ごし、太郎にとっての初めての長い休み、夏休みはどう過ごそう?など悩みはあるものの、親友の国内線スチュワーデスの牧ちゃんや、フリーライターの杏奈ちゃんたちに助けられながら平凡な毎日を過ごしている所に、不穏な影が・・・。
ここに出てくる失踪した夫・田口はかなりな嫌なずるい男性でした。
もっとちゃんと慰謝料や養育費とかなんで要求しないの??と思ったけど、そこにはまだ田口を愛しているという気持ちがあるんですね 切ないし痛いです。

もう一つ収録されている『ボーイ ミーツ ガール』は、太郎君の同級生の鈴木君のお話。一人暮らしをしているマユミちゃんにほのかな憧れを持つが。。これまた、大人な問題がちらほらとあります。

おすすめポイント:
汁を滴らせながら桃にかぶりつくシーンがあるんですが、ここを読むと、めちゃめちゃ桃を食べたくなります。

ガール ミーツ ボーイ

著者:野中 柊

ガール ミーツ ボーイ

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『家内安全』夏石鈴子

家内安全 Book 家内安全

著者:夏石 鈴子
販売元:マガジンハウス
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『家内安全』夏石鈴子 マガジンハウス ★★★★

恋人ができて、セックスをして、子どもを産んで、家庭を作る…。ごく普通の日常の、その裏に流れるさまざまな感情のうねりを優しく、鮮やかに描く。必死で生きていくことの美しさ、切なさが胸を打つ小説集。 ----データベースより。

「ゆっくり進む船が行く」・・・母親とは強い。とにかく強いのである。妊娠五ヶ月の身重の体で、人が沢山居るメジャーなお祭りに行くのは本当に危険ですよね。赤ちゃんの生命を賭けています。相手の男性は、働かず、いわゆる”ヒモ”と呼ばれるススム。読んでいてはがゆかったです。主人公の女性は赤ちゃんを産む前は自分に対するススムの愛情を不安に思う、女の心理がありますが、出産後はとても芯があり、頑なな自信を持ち、強くなっています。もうこれは、母親だけが体験する生命の神秘だと思いました。

「鉄紺」・・・すごく考えさせられるお話でした。太ももに生まれつき痣があるというだけで、杏子は様々な人間の心理を観察してしまう事になります。見なかったふりをする人・声をあげて痣について聞いてくる人・同情ゆえに優しくしてくれる人・陰でいろいろ言う人。。どれも残酷なんですよね。 虎太は、まっすぐに「偉かったな」「他の奴にもう見せるな」と言ってくれます。かっこいいですよね。すごく素敵!心が広い・大きいとは、こうゆう事なのかなって思いました。

「ぬるぬる」・・・ここで主人公の女性がしている雑用という仕事はとても偉い事だと思います。一番気を使うだろうし、気配りがないと駄目なので、大変ですよね。共感できた場面は、体と体の関わりよりも、好きな人に髪をなでてもらって名前を呼んで、可愛いよって言われる方が幸せ という所です。

「ショートストーリーズ」・・・”きっと、大丈夫”、”良人”、”うふふ”、”埴生の宿”、”別れてのち、三年”、”MOTOR DRIVE”収録。 私的には、運転免許を持っていないせいか、”MOTOR DRIVE”が印象的でした。

「家内安全」・・・私も一時期、一人暮らしをしていたけれど、あまり淋しいとは感じませんでした。特に一人の食事を淋しいとは思わなかった気がします。自分の好みの味つけができるし、サボりたい時はサボれるし(笑)。。だけど、その時期、かなり痩せたんですよね。それってもしかして淋しかったのかもしれません。女性は学校を卒業しても、会社の中で何かしら 派閥 があります。一緒にお昼を食べる為の仲間、休み時間におしゃべりする為の仲間。。あまり深くマイナスに考えてはいけないと思いつつも、私自身、そうゆう粘りつくようなグループ感覚は苦手でした。本当に食べたいものを、読書とかしながら食べたいなって思います。だからか、このお話の主人公山川さんの言いたい事にはすごく共感できました。でも、不倫は無理ですが。ここに出てくる遠藤さんの奥さんも、すごく強い。幼い子を持つ母親は強い。良くも悪くもとてもかなわない図太さ。 山川さんの夫になった伸一さんがとても素敵でした。「家内安全」と、ためらいのない、太い大きい健康的な字を書くなんて、きっと山川さんは幸せですね。

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