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『アカペラ』山本文緒 

『アカペラ』山本文緒 ★★★★☆

アカペラ

苦しみ抜いた日々から再生を果たした著者が贈る、あなたの心を温める珠玉の物語。

無職で病弱な弟と暮す50歳独身の姉。20年ぶりに田舎の実家に帰省したダメ男。じっちゃんと二人で生きる健気な中学生。人生がきらきらしないように、明日に期待し過ぎないように、静かにそーっと生きている彼らの人生を描き、温かな気持ちと深い共感を呼び起こす感動の物語。6年ぶり、待望の小説集にして最高傑作!

大好きな山本文緒さんの復帰第一作目。「アカペラ」「ソリチュード」「ネロリ」の3編が収められています。山本さんの新作が読めてすっごく嬉しいです。でも、体調も心配です。あまり無理なさらないように・・・と思ってしまいます。

今までの山本文緒さんの作品といえば、普通に見える主人公の女性がだんだんと歪んでいって、最後にはとんでもない、目をおおいたくなるような事になっちゃうパターンが多かった気がします。「あなたには帰る家がある」や「眠れるラプンツェル」や「恋愛中毒」とか(どれもすっごいお気に入りなのです)。今回は、出だしの文章からして、タッチがなんだか違うな~と感じました。

「アカペラ」の主人公は15歳の女の子・権藤たまこ。母親はしょっちゅう家出をするし、大好きなおじいちゃんにひどい事を言ったりするから嫌い。おじいちゃんの名前は金田泰造、あだ名はトモゾウさん(ちびまるこちゃんからの由来)。おじいちゃんは何故だかたまこの事を初恋の「まあこさん」だと思い込んでいます。いや~私、優しくて可愛らしいおじいちゃん物って、もう涙腺が駄目なんですよね。ある日たまこは、母親がおじいちゃんをいじめるので、おじいちゃんを連れて家出するのですが。。いや~、やっぱり泣いちゃいました。こんな泣かせ方も出来る作家さんだったのですね。

「ソリチュード」に出てくる駄目男の気持ちも分かるんですが、なんとなくイラッとしました(笑)。自分を心配してくれる女性たちがいるのに、携帯の電源をオフにしていたり。。ことをうやむやにして逃げてしまう男性って苦手なんですよね。美緒の娘の一花がハルイチおじさん(主人公)に帰って欲しくなくて、携帯を壊したり雨の中走ったりするシーンはすごく良かったです。

「ネロリ」には、ちょっと歪んだ女性が出てきました(山本さんらしい?)。病弱な弟を生きがいにしている中年女性。その弟はヒデちゃんといって39歳。無職。病弱で働けないのです。これは、目には見えない病気が、どれだけ健康な他人にはわかってもらえなくて、なかなか辛い思いというのを静かに表現されているのだな、と感じました。ココアちゃんという第三者の目線でヒデちゃんの体調や姉と弟の親密な関係が淡々と書かれてあったので、読みやすかったです。山本さんの体調が完全に良くなったら、がっつりとした長編が読みたいです。

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