『波打ち際の蛍』島本理生
『波打ち際の蛍』島本理生 ★★★★☆
川本麻由はかつての恋人によるDVで心に傷を負い、生きることに臆病になっていた。ある日通院先で植村蛍に出会い、次第に惹かれてゆくが…どこまでも不器用で痛く、眼が眩むほどスイートな恋愛小説!!
『ナラタージュ』程の衝撃はなかったものの、島本さんのピュアで透明感のある文章は健在でした。「蛍」とは麻由の彼の名前。2人は相談室の前で出会います。その時も、蛍は文庫本を片手に持っていたり、ある時は喫茶店でこれまた本を読みながら煙草を吸っていたり、部屋には書斎があります。ここまでだと、本好きな女性は「いいなあ」と思うと思います。しかも、DVで傷ついた麻由にとても優しいんです。交際するといっても、麻由の場合、トラウマで相手の身体に触れる事さえ困難なんですね。でも、蛍はくさらず、健気に待ってくれます。・・・・だけどだけど、なんだか蛍という男性のよさがいまいちわかりませんでした。一緒にいると気を使いすぎて疲弊してしまうというか、こちらが情緒不安定になってしまいそうな印象をうけました。
島本さんは、心が傷ついた女性を描くのが上手だと思う。どんな時にどんな感じで恐怖が襲ってくるのか。そして、内面的な傷は外側からは見えないから、麻由の母親のように「そろそろ働くのかとおもった」みたいな焦ってしまうような事を口にしてしまう人々。そんな描写がああ、わかるな~としみじみとしちゃいました。
島本さんの作品って不思議。書いてある内容は、結構悲惨な内容だったりするのに、語り口がすごく穏やかだから、読んでいる間、とても静かな気持ちでいられるんですよね。こうゆう語り方が出来るという理由だけでも、私は島本作品を読み続けるだろうなと思う。プラトニックな関係(トラウマの為にそうならざるをえないという事もありますが)のお話しを読んで、なんだか清潔な心地になりました。
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