カテゴリー「16 桜庭一樹」の3件の記事

『少女七竈と七人の可愛そうな大人』桜庭一樹

『少女七竈と七人の可愛そうな大人』桜庭一樹 ★★★★☆

少女七竈と七人の可愛そうな大人 (角川文庫)

「たいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった」川村七竈は、群がる男達を軽蔑し、鉄道模型と幼馴染みの雪風だけを友として孤高の青春を送っていた。だか、可愛そうな大人は彼女を放っておいてくれない。実父を名乗る東堂、芸能マネージャーの梅木、そして出奔を繰り返す母の優奈ーーー誰もが七竈に、抱えきれない何かを置いてゆく。そんな中、雪風と七竈の間柄にも変化がーーー雪の旭川を舞台に繰り広げられる、痛切でやさしい愛の物語。

ずっと読んでいたい、そう思える作品でした。この世界観好きだな~。最初の七竈の母親の優奈(外見はいたって地味)の、辻斬りのように男遊びをしたいという、この出だしからして面白い。どうしていきなりそんな風に男遊びをしたいくなったかという本当の理由は、なかなか切なくて、ロマンチックなものなのだけれども。その時に産まれた七竈はすごい美少女。どうしてかというと、いんらんな母親から生まれてきたからです。七竈の美貌は、狭い旭川の町ではめだってしょうがないんですよね。幼馴染みの雪風というこれまた美青年の少年と二人、ひっそりと美しく成長します。この二人の距離感が、とても好きだなと感じました。以心伝心が可能なような関係。七竈の居間に広がる鉄道模型でひっそりとお互いの名前を呼び合う場面がとても静謐で美しいんです。鉄道模型屋に行くとき、二人は異形のかんばせを隠すためにサングラスをかける所とか、二人の静かだけれど愛情に満ちた会話などがとても読んでいて心地よかった。

語り手がいろいろと変わるという設定も面白かったです。ビショップという老犬の目線だったり、雪風の母親の目線だったり(これがまたリアルなんだな)。後は雪風が語り手の章もありました。写真機の望遠レンズを機関銃にたとえてみたり、現実と空想の中をいったりきたり。どうして人々は、あまりにもの美貌を持つ少女を放っておくことができないんでしょうか?近づけば近づくほど、少女は息苦しい思いをするのに・・・。

芸能マネージャーの梅木さんの性別をずっと誤解したまま読んでいました。桜庭さんって、そうゆう性別トリック(?)が上手ですよね。時々、挿絵が挟まれているんですが、これがすごく味わいがあって、物語を引き立てていました。とても美しくて残酷なお話でした。

にほんブログ村 本ブログへ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『桜庭一樹~物語る少女と野獣~』

『桜庭一樹~物語る少女と野獣~』 ★★★★★(満足!)

桜庭一樹  ~物語る少女と野獣~

彗星のごとく現れ、眼の眩むような輝きで文芸界を席巻する作家・桜庭一樹。新作書き下ろしから直木賞ライヴまでを網羅した必携版!!

桜庭一樹ファンなら必読の本。私は図書館で借りたんだけど、これは買っても良かったな~と思える作品 というかファンブック。桜庭さんのシールが付いています。

一番嬉しかったのは、「幻のブルマー三部作」が読めた事。これは、桜庭さんが中学2年生の時に書いた作品(?)なんだけど、もうこのころから、マジックリアリズム的な要素がプンプンしていて、さすがだなーと感心しました。内容は吹き出しちゃうような面白いものなんですが。

後、桜庭語録みたいなのがすごく良かった。”作家は両性具有””タマシイの色ってどうやって変えるの?””ミステリーとポルノは子供のためのファンタジーだ”・・・など等。一番のお気に入りは、「海外文学は、浴びるように読むのがいい。文庫で買って、ご飯をお代わりするようにどんどん読むのだ」←文庫の帯より。作家さんにこうゆう風に言われると、すっごく海外物を読みたくなっちゃいます。

煩悩の108冊ブックリストもわくわくしながら眺めました♪

短編小説も桜庭色で、すごく素敵でした。

にほんブログ村 本ブログへ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『赤朽葉家の伝説』桜庭一樹

赤朽葉家の伝説

『赤朽葉家の伝説』桜庭一樹 ★★★★★(満点!)

「山の民」に置き去られた赤ん坊。この子は村の若夫婦に引き取られ、のちには製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれて輿入れし、赤朽葉家の「千里眼奥様」と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。――千里眼の祖母、漫画家の母、そしてニートのわたし。高度経済成長、バブル崩壊を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる3代の女たち、そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の血脈を比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。2006年を締め括る著者の新たなる代表作、桜庭一樹はここまで凄かった!

図書館で長い間予約待ちをして、ようやく読むことが出来ました。初桜庭作品です。桜庭さんといえば、すごい読書家ということで、一体どんな作品を描くんだろう?とずっと気になっていました。もう、すっごく面白かったです!!読んだ後、軽くボーっとしてしまいました。個人的に、このお話しは純文学だと思います。ミステリィとしては、弱すぎます。

万葉、毛鞠、瞳子の女3代の物語り。戦後からの昭和史、平成史ですね。紅緑村に捨てられた辺境の血の万葉。確かに、この時代までくらいは、神話が信じられていた時代だと思います。結婚するにも、恋愛ではなくて、周りが決めた人と一緒になるのが当たり前の時代。上の赤こと、製鉄で栄えている赤朽葉家。下の黒こと、製造で栄えている黒菱家。すごく時代を現しています。私が住んでいる長崎県も、戦後、製造業、三菱で栄えた町なので、ああ、わかる!!と思いました。万葉と、黒菱みどりの奇妙な絆が興味深かった。一緒にみどりの兄の死体を始末したり、山奥へ辺境の人たちによるお墓を見に行き、帰りにやけっぱちのようにビートルズを歌ったり。ぶくぷく茶、というお茶がよく出てくるんですが、本当に実在する飲み物みたい。いつか飲んでみたい。赤朽葉家に嫁ぎ、千里眼奥様となった万葉。泪、毛鞠、鞄、孤独と、4人もの子宝に恵まれます。千里眼ゆえに、長男である泪の生涯を予感してしまった悲しさはすごかっただろうな。

毛鞠の時代は、私でもなんとなく想像が出来る時代背景でした。喧嘩にあけくれたり、レディースというのが流行ったり。不良と呼ばれる少女はみんなスカートの裾が長いんですよね。そしてマドンナ的な不良だけど可愛いチョーコ。毛鞠が作った暴走族、「製鉄天使」(アイアンエンジェル)という名前には、笑ってしまいました。いかにも昔、あったっぽい。

毛鞠の人生は、男みたい。働いて働いて、死ぬ。そうゆう時代だったんですね。

そして、語り手でもあった瞳子の時代になります。瞳子がニートだということで、今の時代のふらふらとしている不安を表現しているんだなあと感じました。何か目標に向かってがむしゃらに頑張るという時代ではなくなってしまったんですね。自分探しというか。。恋人のユタカが浮気する場面があるのですが、簡単に浮気が許される時代なんだなあとしみじみと感じました。万葉の時代では、とても考えられない事です。

この作品は、活字を目で追っているだけなのに、ものすごく色鮮やかな作品でした。素晴らしいと思います。これからの桜庭さんにも注目です。

にほんブログ村 本ブログへ

| | コメント (0) | トラックバック (0)