『お縫い子テルミー』栗田有起
『お縫い子テルミー』栗田有起 ★★★☆☆
彼がいなければ世界はないのに、どうして彼のいない現実を生きなければいけないのだろう(『お縫い子テルミー』)。アルバイトをして、ひと夏の経験を買った。ぼくは来週の木曜日、十一歳になる(『ABARE・DAICO』)。誰かに明日を翻弄されても、自分らしく強く生きてゆく。心優しき人々に出逢える、二つの物語。
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『オテルモル』で、眠を追求する不思議なホテルのお話しを読んでから、気になっていた作家さん。栗田有起さん。今回も、淡々としながらも前向きな少し不思議な物語りでした。流しの仕立て屋を生業とするテルミー。私は単純な作業の編み物やクロスステッチといった作業は大好きだけど、自分で型紙をおこしたり、布を裁断したりとかは苦手なので、尊敬しながら読みました。
本名は鈴木照美。名刺には「一針入魂 お縫い子テルミー」とある。島から東京に出てきて、とりあえず食べるために水商売をするのだけど、なかなか上手く出来ない。そんな時、歌を歌うシナイちゃん(男性)に出会い、恋をします。大好きなシナイちゃんの家に、居候する事になります。ここで、シナイちゃんの洋服を作る事になるんだけど、その様子がとても面白い。読んでいる方までわくわくしました。生地卸屋めぐりをして、何千もの種類の布地、それに合う糸や針。見つめ、触り、時には匂いを嗅いだりします。テルミーが布地に一息にはさみを入れる瞬間に「ふうぅ」となりました。
テルミーの祖母の格言が面白かったです。
テルミー自身も、東京で流しをするにあたり、ルールを作るのですが、これもなるほど という感じ。実際、こんな生活をしたら体を壊すと思うのだけれど、何故か前向きだなと思わせてくれる所があります。
これを、恋愛小説か?と聞かれたら、うーん。となってしまうけれど、読後、私は私で頑張るぞ みたいな前向きな気持ちになれました。
『ABARE・DAICO』は少年が主人公。小松誠二。花粉症で鼻水が沢山でたり、母子家庭でお金がなかったり、背が低かったり、悩みはいろいろあるけれど、彼はとても強いです。同級生の水尾君ことオッチンに憧れながらも、自分の力で生きていきます。
体操服を失くしてしまった。新しく買うには、6千円いる。でも、うちにはお金がない。そこで、誠二君はアルバイトをしようと考え、いつも行くスーパーの掲示板に「留守番します 一時間 100円」というカードを張ります。そして、ある家から依頼がくるのですが。グアムとハワイという名前の猫がいる家。煮すぎたお味噌汁の匂いがする家。そして、洋服が沢山積み上げられている家。そこで、ある秘密を見てしまいます。ここでの、誠二君の心理が面白くて笑ってしまいました。「てことはあれだろ?ふかく考えたくない。。」みたいな(笑)。小学生にとって警察という人がどんなに怖い存在か、とか、幼い頃ってこんな事を考えたり行動してたよね~と、心がほんわかしちゃうお話しでした。![]()
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