『メタボラ』桐野夏生
『メタボラ』 桐野夏生 ★★★★☆
破壊されつくした僕たちは、“自分殺し”の旅に出る。なぜ“僕”の記憶は失われたのか?世界から搾取され、漂流するしかない若者は、日々の記憶を塗りかえる。孤独な魂の冒険を描く、まったく新しいロードフィクション。
桐野作品は本当に読み応えがあります。今回もページをめくる手がなかなか止まらず、睡眠不足になりそうでした。最初、男の人がジャングルのような所から必死に走って逃げている所から始まるんですが、記憶喪失だから、自分が何故逃げているのかも、自分がどこに向かっているのかもわからない状態。怖すぎる(汗)。逃げている途中でアキンツというちゃらんぽらんな男性と出遭って、一緒に行動するようになるんですが、その時のお互いの心理が、ギンジ(主人公)とアキンツの両方の視点から描かれてあって、面白かった。
ギンジが無一文から少しづつ身の回りのものを揃えていく所は、ロールプレイング的な面白さがあった。最初はアキンツが捨てたペットボトル、次はコンビニで出会ったミカの車の中で見つけた100円玉とか。。
アキンツの話す言葉は、沖縄の言葉で、全然親しみなんてないのに、すらすら読めたのにはびっくり。ただ、このアキンツは頭のてっぺんから爪先まで、短絡的というか、その場しのぎというか、欲望に忠実なんですよね。でも不思議と不快感はなかったかな。ミカに気に入られて部屋に泊めてもらう術とか、ホスト業界のお話しとか興味深かった。ミカやミカのルームシェアをしている聡美という女性は、いろいろいっても強いんですよね、生きてくという事について。それに比べてギンジもアキンツも弱いな~と感じました。それが今の時代なんでしょうか?ギンジの家庭環境は最悪だったけど、大学は中退しても、高校を出ているんだから、どこかに就職できたはずじゃん!と思いました。しかしギンジの父親はDV、母親は育児放棄(ネグレクト)とは。。読んでいてくらーい気分になりました。
ものすっごくリアルだなと感じたのは、ギンジが駄目になる前にお金を貯めようと思って登録した派遣会社。2人部屋だと聞いていたのに4人部屋だったり、ああ、こんな風にして搾取されていくんだーとしみじみと悲しくなりました。仕事が出来すぎても孤立するし、出来なくても居場所がなくなる。寮費とかでかなりお給料をひかれて、なかなか貯金なんて出来ない。そりゃ、未来に希望なんてもてませんよね(涙)。
沖縄のウチナー、ナイチャーとかの事は、今初めてしりました。そうゆう微妙な摩擦というか関係があるんですね。ギンジが住むことになるゲストハウス・安楽ハウスでの出来事もとてもリアル。リンコみたいないつも愛情を求めている女性っていそうだし、香織さんみたいに自分を正当化することが上手な人もいると思う。ギンジの未遂事件の事がテレビに流れた時のやりとりとか、すっごく嫌だった。
ラストは、はっきりいって消化不良でした。「え??こんな終わりかたしちゃうの?」みたいな(^^;;;。もうちょっとまとめて欲しかったな。目的というか。
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