カテゴリー「12 桐野夏生」の3件の記事

『メタボラ』桐野夏生

『メタボラ』 桐野夏生 ★★★★☆

メタボラ

破壊されつくした僕たちは、“自分殺し”の旅に出る。なぜ“僕”の記憶は失われたのか?世界から搾取され、漂流するしかない若者は、日々の記憶を塗りかえる。孤独な魂の冒険を描く、まったく新しいロードフィクション。

桐野作品は本当に読み応えがあります。今回もページをめくる手がなかなか止まらず、睡眠不足になりそうでした。最初、男の人がジャングルのような所から必死に走って逃げている所から始まるんですが、記憶喪失だから、自分が何故逃げているのかも、自分がどこに向かっているのかもわからない状態。怖すぎる(汗)。逃げている途中でアキンツというちゃらんぽらんな男性と出遭って、一緒に行動するようになるんですが、その時のお互いの心理が、ギンジ(主人公)とアキンツの両方の視点から描かれてあって、面白かった。

ギンジが無一文から少しづつ身の回りのものを揃えていく所は、ロールプレイング的な面白さがあった。最初はアキンツが捨てたペットボトル、次はコンビニで出会ったミカの車の中で見つけた100円玉とか。。

アキンツの話す言葉は、沖縄の言葉で、全然親しみなんてないのに、すらすら読めたのにはびっくり。ただ、このアキンツは頭のてっぺんから爪先まで、短絡的というか、その場しのぎというか、欲望に忠実なんですよね。でも不思議と不快感はなかったかな。ミカに気に入られて部屋に泊めてもらう術とか、ホスト業界のお話しとか興味深かった。ミカやミカのルームシェアをしている聡美という女性は、いろいろいっても強いんですよね、生きてくという事について。それに比べてギンジもアキンツも弱いな~と感じました。それが今の時代なんでしょうか?ギンジの家庭環境は最悪だったけど、大学は中退しても、高校を出ているんだから、どこかに就職できたはずじゃん!と思いました。しかしギンジの父親はDV、母親は育児放棄(ネグレクト)とは。。読んでいてくらーい気分になりました。

ものすっごくリアルだなと感じたのは、ギンジが駄目になる前にお金を貯めようと思って登録した派遣会社。2人部屋だと聞いていたのに4人部屋だったり、ああ、こんな風にして搾取されていくんだーとしみじみと悲しくなりました。仕事が出来すぎても孤立するし、出来なくても居場所がなくなる。寮費とかでかなりお給料をひかれて、なかなか貯金なんて出来ない。そりゃ、未来に希望なんてもてませんよね(涙)。

沖縄のウチナー、ナイチャーとかの事は、今初めてしりました。そうゆう微妙な摩擦というか関係があるんですね。ギンジが住むことになるゲストハウス・安楽ハウスでの出来事もとてもリアル。リンコみたいないつも愛情を求めている女性っていそうだし、香織さんみたいに自分を正当化することが上手な人もいると思う。ギンジの未遂事件の事がテレビに流れた時のやりとりとか、すっごく嫌だった。

ラストは、はっきりいって消化不良でした。「え??こんな終わりかたしちゃうの?」みたいな(^^;;;。もうちょっとまとめて欲しかったな。目的というか。

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『残虐記』桐野夏生

残虐記 (新潮文庫 き 21-5)

 『残虐記』桐野夏生 ★★★★

薄汚いアパートの一室。中には、粗野な若い男。そして、女の子が一人――。

失踪した作家が残した原稿。そこには、二十五年前の少女誘拐・監禁事件の、自分が被害者であったという驚くべき事実が記してあった。最近出所した犯人からの手紙によって、自ら封印してきたその日々の記憶が、奔流のように溢れ出したのだ。誰にも話さなかったその「真実」とは……。一作ごとに凄みを増す著者の最新長編。

桐野作品を読む時、それはある種のドキドキ感を私にもたらします。それは決して嬉しいドキドキではなく、恐怖のドキドキなのだ。今まで読んできた桐野作品にしては、非常に頁数が少ない作品。

大人になった被害者の元へ届けられた加害者・安部川健治からの手紙。そこには、「私も先生をゆるさないと思います」と書かれている。何故?これは、最後まで謎のままなのですが、ある時期を、濃密に過ごした2人にしかわからない感情なのかもしれない。

まず、読んでびっくりしたのが、少女が男に監禁されて、救出された後、幸福が戻ってこないという所です。もちろん、監禁中の少女は、地獄のような日々を過ごします。けれど、そこから抜け出しても、壊れてしまった両親、世間の目。それにたえなければならないという事ですね。世間の人は同情こそすれ、監禁されて、変態な事をされただろう少女を普通の目ではみてくれません。なんて残酷で、救いがないんでしょう。常に自分の心に壁をつくり、大人と対峙していく被害者がかわいそうでたまりませんでした。

後、加害者・健治とやたべさんとの異常な依存関係。最初、読みながら、「お願いやたべさん気がついて助けてあげて」と思っていたのですが・・。その思いはひっくり返されてしまいました。ええ!!という感じです。

読後感は苦いです。救いがありません。でも、これが桐野作品なのかなって気がします。

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『魂萌え!』桐野夏生

魂萌え ! Book 魂萌え !

著者:桐野 夏生
販売元:毎日新聞社
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『魂萌え!』桐野夏生 毎日新聞社 ★★★★

ささやかな<日常>に、豊饒な世界を描き出した、再生と希望の物語。
夫婦ふたりで平穏な生活を送っていた関口敏子、59歳。63歳の夫・隆之が心臓麻痺で急死し、その人生は一変した。8年ぶりにあらわれ強引に同居を迫る長男・彰之。長女・美保を巻き込み持ちあがる相続問題。しかし、なによりも敏子の心を乱し、惑わせるのは、夫の遺した衝撃的な「秘密」だった。
『OUT』や『柔らかな頬』、『グロテスク』同様、世間という荒波を、揺らぎながら漂流していく主人公。これまでの作品のような犯罪は出てこない代わりに、人々の日々の細部が、丹念につづられていく。
「これから先は喪失との戦いなのだ。友人、知人、体力、知力、金、尊厳。数えだしたらキリがないほど、自分はいろんなものを失うことだろう。老いて得るものがあるとしたら、それは何なのか、知りたいものだ」(本文より)
たったひとりで、老いと孤独に向き合うことを決意する主人公。世間と格闘しながら、変貌を遂げていく敏子の姿は、読む者に大きな希望を与えてくれる。私たちが生きる、ささやかで儚い日常という世界を舞台に、著者の新たな代表作が誕生した。-------------

すっごく面白かったです!!477頁と、結構ボリュームのある本だったのですが、途中で中断する事が出来ずに夜中までかかって読みました(*^.^*)。以前に、桐野さんの『グロテスク』を読んで(感想はまだ書いてません)おおーー!!若者の心情がリアルで面白いなーって感動したんですけど、この作品も中年女性の心模様がすごく面白かった!!

図書館で書架をブラブラしていて 「あ、これドラマになっていなかった?」と思って借りてみたんですが正解でしたね。

各タイトルが「混乱」→「夫の秘密」→「家出」→「人生劇場」→「紛糾」→「水底の光」→「皆の本音」→「嫁の言い分」→「手帳の余白」→「妻の価値」→「夜の惑い」→「燃えよ魂、風よ吹け」となっているんですが、もうそのタイトル通り、すべてがドンピシャって感じでした。

とにかく最初から最後まで、頑張れ敏子さん!!モードでした。

お風呂からなかなか上がってこない夫をしばらく見に行かなかった理由が最後にきちんと書かれていて納得でしたね。夫が言った「話がある」ってやっぱり離婚の話しだったのかしら・・・そうだとしたら悲しい。

風呂婆さんこと宮里さんにどーしてそこでお金を払うの!!二回も!!

いくら息子とはいえ彰之の言うとおりにしちゃ駄目よ!!

敏子さんはまだ生きているのに相続とかしちゃ駄目!!

・・・など等、かなりやきもきしました。その分、少しずつだけど強くなって、ちゃんと言いたい事を言うようになった敏子さんが愛しかったです。

そうですよね、普通に専業主婦をしていたら、カプセルホテルに泊まるっていうだけでも、すっごく勇気がいりますよね。私自身だってそんな経験ありません。せいぜいビジネスホテルどまりです。

まさかカプセルホテルの野田さんが風呂婆さんとあんな繋がりだったとは!!!風呂婆さんの最後は少し涙が出ました。遺品が死んだ犬ぺスの写真一枚だなんて(;_;)。。

息子の彰之には最初から最後まで腹が立ちました。ミュージシャンになりたいなんていう息子に頑張れという意味で「成功するまで帰ってきては駄目よ」といった母心が何故そうなるのって思います。ひねくれています。長男なのに最後まで敏子の面倒を見る気はないという態度にイライラしました。

娘の美保は、まだ普通の娘さんで少しホッとしました。兄貴の思うようにはさせない!と結構しっかりしていますし。

彰之のお嫁さんの由佳里さんが、もう本当に今時って感じの女性。桐野さんは上手いなあ。会話に出てくる言葉も「へこむ」とか「トンズラ」とか。そして、実の息子の彰之よりも同じ女として由佳里の気持ちを理解しようとする敏子さんがお人好し。100万って大きいです。

後、同年代の女友達との関係も興味深かったですね。学校や職場で栄子みたいな感じの人って一人はいたような気がします。苦手ですねー(><)。一旦家庭を持つと、友情なんてこんな感じなんでしょうか。

敏子さんは蕎麦食べ歩き会の、お洒落な塚本さんに心惹かれますが、私的には実直な今井さんの方が魅力的に思えました。真っ赤なネクタイなんて可愛らしいじゃないですか。

亡くなった後に発覚した愛人・伊藤昭子。敏子VS昭子 という感じなんですが、本当は正妻の敏子が正しいのですが、昭子も決して悪い人ではなく、あんまり憎む感情は私の中では出てきませんでした。その分、安定と刺激の両方を手放さなかった夫・隆之がいけないなーです。

夫に先立たれた未亡人がこんなに大変だとは思いませんでした。ただただびっくりでした。

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