カテゴリー「06 恩田陸」の5件の記事

『小説以外』恩田陸

『小説以外』恩田陸 ★★★★★(満点)

 小説以外

本好きが嵩じて作家となった著者は、これまでどのような作品を愛読してきたのか?ミステリー、ファンタジー、ホラー、SF、少女マンガ、日本文学・・・あらゆるジャンルを越境する読書の秘密に迫る。さらに偏愛する料理、食べ物、映画、音楽にまつわる話、転校が多かった少女時代の思い出などデビューから14年間の全エッセイを収録。本に愛され、本を愛する作家の世界を一望する解体全書。

ふふふ。読書が大好きな恩田さんのエッセイ。短いエッセイがぎっしり詰まっているので、日常の隙間(お風呂の前とか)に、ちびちび読むつもりが、なんだか速いスピードで読んじゃいました。ちょっと意外だったのは、あんなにいろんなジャンルのお話しを次々と生み出されていらっしゃるのに、エッセイとなると苦手・・・という事。なんとなくエッセイも虚実入り乱れてスラスラと書いちゃうイメージがあったのですが。

もう、読んでいて共感しまくりでした。本好きさんなら必ず一度は思うだろう、「もっと本を読む時間が欲しい」という願い。しかも恩田さんは事務のお仕事をしながら、夜中にこっそりと小説を書くという生活を送っていた時期があったらしいので、それは本はなかなか読めなかったでしょうね~(汗)。社会人になると、本をハードカバーで買えるようになるかわりに、仕事や遊びやお付き合いなどで買った本を読めなくて結局積読状態になってしまうんですよね。

本書を読むと、ああ、こうゆう所から物語りのヒントを得ているのだな、という恩田さん独特の感覚が分かります。日常にある鏡、押入れ、中庭、引き出し・・・ありとあらゆるアイテムが恩田さんの創作意欲を沸き立てるんだな~としみじみ。恩田さんのスケジュール帳の後ろには、「読まねばならぬ本」リストがあるそうです。それが日に日に増えていっているという。。(ものすごい親近感です)。お気に入りのソファを購入したものの、まだそのソファの上でゆっくり本を読んだ事がないという箇所では、笑っちゃいました。このエッセイには、この時点で恩田さんが将来書きたいと思っている小説の構想が結構載っていました。もちろん、それは着実に本になっているようです。すごいな。本に関する事が満載だったので、とにかく楽しめました。恩田さんの本にまつわるエッセイ、他にも読みたいなあ。

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『朝日のようにさわやかに』恩田陸

『朝日のようにさわやかに』恩田陸 ★★★★☆

朝日のようにさわやかに

ビールについての冒頭から、天才トランペッターや心太へ話題は移り、最後は子供の頃に抱いていた謎の解明へと至る―。虚実の狭間を、流れる意識のごとく縦横に語る表題作他、ホラー、ミステリ、SF、ショートショート等々、恩田陸のあらゆる魅力がたっぷり詰まった、物語の万華鏡。

「図書室の海」はまだ未読なので、私にとって初の恩田さんの短編集です。

「水晶の夜、翡翠の朝」「ご案内」「あなたと夜と音楽と」「冷凍みかん」「赤い毬」「深夜の食欲」「いいわけ」「1千一秒殺人事件」「おはなしのつづき」「邂逅について」「淋しいお城」「楽園を追われて」「卒業」「朝日のようにさわやかに」の14つのお話しが収録されています。

これはどれも良かったです。ラストもほぼ納得のいくものだったし、恩田さんでしか出せないような海外作品の香りがしました。最初の「水晶の夜、翡翠の朝」は舞台が外国で、登場人物の名前もヨハン、ジェイ・・・等など、カタカナなのですが、さすが恩田さん違和感なく読む事ができました。ラストもなんともブラック風味で良かったです。印象的だったのは、「あなたと夜と音楽と」かな。これはラジオのDJの男女が語り手となって番組を進めていくうちに、殺人事件が起こる、というものなんですが、昔よくラジオを聴いていた頃がすごく懐かしくなっちゃいました。DJ2人のひやひやとする心理戦にドキドキとしました。後は、「冷凍みかん」も好き。これはSFなんですが、地球を冷凍みかんに例えちゃうという設定が奇抜で面白かったです。星新一さんっぽいなあと思ったな。

他にも、児童物、スプラッタ物、オマージュ物、ドキュメンタリータッチ物とあり、かなり楽しめました~。基本は短編集って苦手なんですが、これは寝る前にちょっとずつ楽しんで読みました。

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『木洩れ日に泳ぐ魚』恩田陸

『木洩れ日に泳ぐ魚』恩田陸 ★★★★☆

木洩れ日に泳ぐ魚

あの旅から、すべてが変わってしまった。一組の男女が迎えた最期の夜明らかにされなければならない、ある男の死の秘密。運命と記憶、愛と葛藤が絡みあう恩田陸の新たな世界。
小説を読んでいるのに、まるで劇を見ているような感覚に陥りました。こうゆう文体を紡げる恩田さんって、やっぱりすごいなあ。舞台はアパートの一室。一組の男と女がいます。この二人は、明日の朝には別れる事が決まっているんです。そんな二人が、トランクを机にして、お酒を飲みながら、ある事件について語り始めます。

一年前に二人で行った、山登りのツアーコンダクターをつとめてくれた男性の転落事故のお話です。二人は、お互いに、相手があの男を殺したんではないか?と思っています。そしてお互い、相手から犯人は自分だという事を白状させようとします。腹の探りあいですね。

細かな設定やアイテムがすごーく良かったです。本当はまだ煙草が残っているのに、煙草を買いに出かける男。トイレ休憩をどの段階で取るべきか策略する女。亡くした片方のピアス。そのピアスの隠し場所。ワインのコルクを抜く時に使うアーミーナイフ。そのアーミーナイフに刻印されている男の本当の名前。・・・どれも嫌な汗をかきながらどきどきして読みました。

読み始めた時は、普通のカップルだと思っていたんですが、実はこの二人はそうじゃないんですね。そうじゃないからこその、踏み越えてはいけない線があって、すごく悲しかったな。逃げ腰の男のをずるいと感じました。男がある日、ふわふわして綿菓子のような素敵なマフラーをしていたので、女はそれを褒めながらなにげなく触ろうとするんですが、ふっと男は体を避けてしまうんです。ほんの数秒の事なんだけど、女は新しい女の存在に気がつきます。

これって、ぞくぞくとさせられるミステリーでもあり、恋愛物語でもあるんですね。

ラストは、これぞ文学という感じで良かったです。

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『チョコレートコスモス』恩田陸

チョコレートコスモス 『チョコレートコスモス』 恩田陸 ★★★★★(満点!)

「まだそっち側に行ってはいけない。そっち側に行ったら、二度と引き返せない。」
幼い時から舞台に立ち、多大な人気と評価を手にしている若きベテラン・東響子は、
奇妙な焦りと予感に揺れていた。伝説の映画プロデューサー・芹澤泰次郎が芝居を手
がける。近々大々的なオーディションが行われるらしい。そんな噂を耳にしたからだっ
た。同じ頃、旗揚げもしていない無名の学生劇団に、ひとりの少女が入団した。舞台
経験などひとつもない彼女だったが、その天才的な演技は、次第に周囲を圧倒してゆ
く。稀代のストーリーテラー・恩田陸が描く、めくるめく情熱のドラマ。
演じる者だけが見ることのできるおそるべき世界が、いま目前にあらわれる!

徹夜本とまではいかないけれど、ものすっごく楽しんで読みました。まさしく、活字版「ガラスの仮面」。恩田版「ガラスの仮面」でした。恩田さんって劇や戯曲とか好きそう。『六番目の小夜子』でも、学園祭の舞台のシーンがあったし、『夜のピクニック』でも、歩きながら劇の内容を考えるシーンがありました(沢山靴がある みたいな)。しかもこの本は、500頁を超える分厚さなのに、ラストがラストではない!!続編を期待せずにはいられない終わり方でした。

生まれつき芸能一家で、優秀で美貌の持ち主、東響子。(もうこの設定の時点で、おおぅ 姫川亜由美じゃんって嬉しくなりました)劇団に入ったばかりの見た目は平凡極まりない地味な佐々木飛鳥。この2人がどこでどう繋がってどう絡んでいくのかハラハラしながらの読書になった。

脚本家の神谷が作品をなかなか書けない時に道端でみかけた不思議な少女。佐々木飛鳥。飛鳥は、変幻自在に、様々な人間を模写するんですが、その描写がまた楽しい。

漫画のガラスの仮面でもそうなんだけど、天才と言われてつつも、その陰ではものすごく真面目に懸命に努力している姫川亜由美 ここでは東響子の行き方が好きです。ものごころついた頃から当たり前のように舞台に立ってきた。だけど実に奇妙な商売だ 一夜限りの 何の実体も無い幻を作るために、日々奔走する人が世界中にいて、ほんの数時間の幻のために人生を捧げている。。と、自分の心の中で東響子は感じるのですが、すごくかっこいい!!

「金色のガラスの林檎」の場面や、オーディションのブランチ役の時に、安積あおいをやっつけちゃう感じなのが爽快。また、古臭くなりがちな漫画版「ガラスの仮面」を、ここでは劇も出来るアイドルとして、安積あおいという登場人物を出したことも、上手いと思いました。

佐々木飛鳥が劇団ゼロに入団する時のエチュードも楽しい。「バサラ」という名前の犬を実演販売したり、公園の遊具を使って風を表現したり!!

劇団ゼロの旗揚げ公演「目的地」も読み応えあり。1日目と2日目で、飛鳥は違う演技をするのですが、読んでいてまさに観客になっているような感じでした。

東響子と佐々木飛鳥が交わる部分は、ラストの方しかありません。これは、続編を期待してしまいます。

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『六番目の小夜子』恩田陸

六番目の小夜子 (新潮文庫)

『六番目の小夜子』恩田陸 ★★★★★(満点!)

今年16冊目。

津村沙世子―とある地方の高校にやってきた、美しく謎めいた転校生。高校には十数年間にわたり、奇妙なゲームが受け継がれていた。三年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が、見えざる手によって選ばれるのだ。そして今年は、「六番目のサヨコ」が誕生する年だった。学園生活、友情、恋愛。やがては失われる青春の輝きを美しい水晶に封じ込め、漆黒の恐怖で包みこんだ、伝説のデビュー作。

いつか読もう読もうと思って、ずっと積読状態だった作品です。私の中で恩田陸という作家さんは、「ラストが曖昧で、それを読者の想像にまかせる」というイメージがずっとあって、なかなか手が出ませんでした。謎がはっきりしないと、うーん。。となってしまう性格なので。。想像力をもっと鍛えようと思います。

そんな思いの中、この恩田さんのデビュー作を読んでみて、あまりの面白さにびっくりしました!!読書家の方々が、恩田さんを好む理由が分かった気がします。

ミステリィとしても読めるし、甘酸っぱい青春小説としても充分に楽しんで読めました。

プロローグからして、「ゲーム」「犯人」「サヨコ」というちょっと恐ろしげな言葉が出てきて、ドキドキしました。「春の章」、「夏の章」、「秋の章」、「冬の章」、「再び、春」という構成になっています。高校に入学する際の、緊張するような、でも、期待にときめくような感じがとても懐かしくてたまりませんでした。

花宮雅子という少女が、すごく好印象でした。平凡だけれど、勉強を頑張り、友情を大切にし、初恋にときめく。高校生活の醍醐味ですよね。彼女の考える事や、物を見る視点などにすごく共感できて、楽しかったです。雅子が恋する唐沢由紀夫も、好青年で、微笑ましかったです。でも、この2人は、あくまでも脇役なんですよね。

進学校に転校してきた謎の美少女、津村小夜子。頭脳明晰。

同じく、頭脳明晰な関根秋。 この2人のやりとりから目が離せませんでした。神秘的な雰囲気を持つ、小夜子が転校してきた事と、その年がサヨコ伝説の年という事もあり、なんともミステリアスな感じで物語りは続きます。担任の黒川先生の行動が読んでいてとても怖かったです。学生にとっては、学校という箱の中では唯一頼りになる存在、それが先生なのに、その先生が・・と考えると、ゾクッとします。

津村小夜子という少女・・ざっくばらんで綺麗で、ハーメルンの笛吹きのように、犬を自在に操れる能力を持っています。加藤が心臓発作を起こしたのは?校庭にある碑に刻んである名前とは?不良少年達が犬に噛み殺されたのは?・・など等、小夜子を中心にいくつもの不思議な現象が起こります。グイグイと物語りに引き込まれました。

一番秀逸だと感じたのは、文化祭のくだりです。一人ひと言ずつ言う事で実現する演劇。なんて素敵なんでしょう!!間の取り方とか、すっごく怖かったし、面白かったです。

ラストは、やはりいまいちはっきりしない部分もありましたが、それを気にしないぐらい、この物語りは満足でした。

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